随分昔の話しだ。


「またアイツはおかしな事してんじゃねーの?」


「そうかもね。」


冷やかしなのかそれとも嫌味なのか。


昇降口でしゃがみ込み靴紐を結ぶ俺を、和也が肘で突く。


「見に行かなくていいのかよ?」

「いーよ別に。」


サラっと言葉を返した俺に和也は退屈そうに短く溜息をつくと、すくっと立ち上がり背を向けた。


「アイツ意外と人気あんだぜ?そのうち持ってかれても知らねーぞ」


「・・・・・」


アイツって言うなよ。

まるでお前のモノみたいな呼び方だな?和也。


「でもま、応援してるし。」


背を向けたまま顔を伏せた和也の言葉に、迷った揚句本音を隠して返事を返した。


「・・・・サンキュ。」


本気で言ってる?

違うでしょ?


嘘をつく時顔を伏せるのは和也の癖だ。