「………」
私は、何も言えなかった。
正しいと思える言葉が
見つからなかった。
惹かれ合う事に
理由はいらないと思う。
それは
間違ってないと思うのに
ためらいもなく
和也に寄り掛かる事は
少しだけ
罪悪感も付いて来る。
それは、
主人に対してじゃなく
和也に対して、そう思う。
いくら好きだと言ってくれても
この気持ちを
本物だと思っても
何もかもが和也に
向かって行ける訳じゃない。
例え、気持ちのすべてで
和也を想ったとしても
私には、自分で
選んでしまった現実がある。
それを間違った選択だったと
今さら気付いても
どうする事も出来ないで
気持ちだけ和也に
逃げてるんじゃないかって
思ってしまう。
だから、和也に悪いと
キレイな私じゃなくて
申し訳ないと
そんな風に思ってしまう。
「リカが、好きだよ。
ただ、瞬間に
そう思ってたんだ。
表札を見たら
名前が2人だったし
多分な、夫婦で住んでんだろう
って事、分かってたんだ。
しょうがねぇじゃん
それでも
気になったんだから…」
目を伏せたまま
ポツポツと話しながら
肩を抱くように回した手を
ゆっくりとずらしながら
今度はその手で
腰を抱き寄せる。

