「リカ?
しょうがねぇから
一緒に寝る?」

「うんっ
しょうがないよね?」

「ばぁ~か」

そう言いながら、笑って
頭をコツンと指で弾いた。

だけど、その笑顔に
どれだけ私の気持ちは
暖められただろう。

ばぁ~かと言った言葉に
何だか涙が出そうになる。

私は、そんな
ささやかな言葉が
欲しかった。

誰でも持ってるような
そんな小さな事が
欲しかった。


こんな冗談
言い合った事が

無かったんだよ…




身体を拭きながら

「けどさぁ、俺
めちゃくちゃ腹減ってんだ」

「何も食べてないの?」

「外へ、食いに出ようと
思ってた。リカは?」



髪の毛を拭いている
タオルの隙間から
可愛いクチビルが見えてる。

男にしては少し長くて
柔らかそうな茶色い髪が
目を隠してしまってるけど

そういう顔も色っぽいなと
そう思いながら見てた。

首筋からアゴへのラインが
とてもキレイなんだね…


「適当に、パン食べた」

「パン? 晩ゴハンに?」

「うん、1人だと面倒だもん」

「そっか」


暑い~と言いながら腰に
バスタオルを巻いただけの
格好でリビングへ出ていく。

冷蔵庫を明けて
ビールを2本取り出すと

1本は私に「飲む?」って
顔で差し出した。

ビールを受け取り
開けないままで

「ねぇ、冷蔵庫の中
見ていい?」

「あぁ、いいけど?」

和也の許可をもらい
ドアを開けてみた。