「お蕎麦、遠慮なく頂くね
ありがとう」

何だか
じっと見ていたら
いけないようで

何かに
吸い込まれてしまうんじゃ
ないかって思えて

早くドアを
締めようと思った。



お隣だと言っても
そう顔を合わせる事もない
都会の生活だから

親しく喋る前に
ドアを締めてしまおう…




「ねぇ、そのお蕎麦は
旦那さんとでも食べてよ。

けど、俺んちに
同じ物がもう1つあるんだ。

一緒に、食べねぇ?」



「一緒に?」


思いがけない提案に驚きながら

だけど

彼の口調が少し
砕けてきた事に気付いた。


何故だろう…?

ほんの挨拶しか
言葉を交わしてないのに

彼の笑顔は
段々と人なつこい雰囲気に
なってくる。