少しかすれて
吐息のような小さな声が
私のクチビルからあと5cm
そんな位置から聞こえてる。
距離が近付く一瞬一秒を
心の中で刻み付けるみたいに
ゆっくりと
和也は私に近付く。
身体の距離も
クチビルの距離も
そして心の距離も
近付いてる…
そんな、気がした。
「どうしてだろうね…
でも理由は
必要ないって気がしてる」
「じゃ、同じじゃん?」
「そう?」
あと少し
あと2cm…
少し首を傾けて
でもまだ目は閉じないで
近過ぎる位置で
見詰め合う。
戻らなくてもいいの?って
確認してるみたい…
それとも
初めて触れる
瞬間までの
ドキドキを
楽しんでるの?
「私、たぶん
和也が好きなんだね?」
「俺もきっとリカに会いたくて
この部屋に決めたんだ」
「じゃ、最初から
決まってたんだね…」
「会う、前からだよ…」

