「だからちゃんと
会いたかったんだ…」

「どうして?」

「…分かんねぇ」

「私も、分からない。
どうして、こんなに
泣きそうなんだろう…」


ソファーに座って
話しながら

触れていた肩が離れて
和也は
真っ直ぐに向き合う。


短い時間で、もう
いろんな事を話したね。

だから私は
目を伏せないで居られる。

私の手に
和也が手を重ねた。

指を絡めて
その手を握り直すと

それは何かが
始まる合図のようで

和也は優しい顔で
フッと笑った。



「分からないけど
泣きそうなの?」

「うん…」

「俺も、こんな気持ち
初めてかも…」


一言
言葉を発するたびに

1cmづつ
和也が近付く。

たった少しの言葉で
距離が、近付く。



「こんな気持ちって
どんな気持ち?」

「ん…
俺も、泣きそう」

「どうして?」

どうして?と聞きながら
私も1cmづつ和也に近寄る。

段々と、もう
顔が目の前にあるね。

キレイな顔に
整った眉に

柔らかそうな
クチビルに…

吐息を、感じられる距離で
見詰め合ってる。



「んなの、分かんねぇよ。
だから、初めてだって
言ってんじゃん?」



こんなに
近くに居るんだから

アナタにだけ
聞こえたらいいよって

そんな雰囲気の声で
和也は話す。