紺色のスーツを着た
ビジネスマンの後ろ姿は
それだけで和也に似て見えた。
まだ若くて
細っそりとした体型に
シンプルなスーツが似合って
私は彼を追い越しながら
顔を見る。
育ちが良さそうで
若いけれど紳士に見えて
真っ直ぐに前を見た
キレイな青い目が
慌てている私を見て
首をかしげた。
私は、必死な顔を
していたかも知れない。
「どうかしましたか?」
と、流れるような英語で
私に聞いた。
気が付けば
彼の腕を掴んでいた。
私の英語で伝わるのか
不安になりながら
「いきなり、ごめんなさい
あなたの…
あなたの使ってる…」
彼は慌てる様子の私に
ニコッと笑って
「ニッポンジン、デスネ?
ニホンゴ、スコシ、ワカリマス」
そう言ってくれた。
「ナニカ、コマッテ、マスカ?」
そう言ってから
私たちは道の真ん中で
喋っていた事に気付き
彼は紳士的な動きで
私を道端に誘導した。
少し彼が動くだけで
微かに感じられるモノに
眩暈がしそうだった。
「大切な…
大切なモノを探してたの」
「タイセツ、ナ、モノ?」
彼は少し首をかしげて
見ず知らずの私を
ニコリと見てくれた。
「あなたが
あなたが使ってる香水の
名前を教えて下さい。
どうしてもソレが欲しいの。
欲しくて、
たまらない…」

