白い翼と…甘い香り


タクシーを待つ列から
飛び出すように駆け出していた

道行く人を追いかけながら
確認するように
追い越していく。

見つけられるかどうかも
分からないのに
必死だった。


欲しい…

今、アレが
欲しい…


走りながら思ったのは
それだけだった。



タクシーの列に並んでいた時
気付いて慌てて振り向いたら

確か紺色のスーツを着た
ビジネスマンだった。


一瞬、追い掛けるのを
迷って目を伏せたら

もう人込みに紛れて
分からなくなってしまった。

少し走ると目の前には
大きな交差点があり

信号が変わるのを
待ってる人の中から

後ろ姿と私が知ってる
目印だけを頼りに探し回る。




お願い
見つかって…


そう願いながら
ビジネスマンの
背中を探し回った。


この人じゃない。

この人も、違う。


どこ…?