もう
見つからない…
そう思っても
携帯電話は耳から離さず
声は聞こえないけど
繋がったまま
かすかな気配だけでも
聞き取りたいと耳を澄ます。
少し足音が
響くような場所を歩いて
バタン…
たぶん、車のドアを
締めた音だと気付いた。
すぐに
エンジンを回す音も聞こえた。
きっと、音が響く
地下の駐車場に車を止めて
ロビーまで上がってきたんだ。
じゃあ、こっちの
エレベーターに乗らなきゃ
降りられないよ…
「和也っ
まだ帰らないでっ!」
ずっと私の声を
聞いてくれてると
そう願って叫んでも
届かない気がして…
ボタンを押しても
エレベーターは地下に居たらしく
どれだけ待っても
上がってこないくらい
遅く感じた。
「もう駐車場
出ちゃったから…」
やっと、やっと
聞きたかった声が
聞こえたのに
車はもう…
走り出したと告げる。
自分で運転して
来たんだよね?
…何のために?

