「リカ…?」

「どう、したの?
もう…
逢わないって言ったのに」


逢わないと言った私の言葉を
和也は聞こえなかったように
無視して話を続けた。


「いま、ひとり?」

「うん、主人は多分
コーヒー飲んでる店に居る」

「何、してたの?」

「飛んでく
飛行機を見てた」


どうして
こんな広いロビーの端と端で

姿は見えてるのに
近寄りもしないで

遠く離れたまま
会話をしているのだろう?


走り寄っても良いのに、それは
いけない事のような気がして

私の足は進まなかった。


和也も
同じように立ち止まったまま
そこから動こうとはしない。


逢わないと言った私の言葉を
守ってくれてるみたいに

その離れた距離を
縮めようとはしなかった。


「あと、何分くらい?」

「もう、1時間も無いわ」


「そっか…、じゃ
ギリギリ間に合った」


「何…、が?」