「ねぇ、和也?」
思い切って呼び捨てで
呼んでもいいと言った名前を
呼んでみた。
和也は
顔色をほんの少しも変えずに
そう呼ぶのが
当たり前だというように
うつむいて
コーヒーカップを見ていた視線を
真っ直ぐに上げる。
下から、少しだけ
見上げるように見る目は
子供のようで
大人っぽくて
だけどキレイで
女の子みたいで
でもやっぱり
男だった。
「なに?」
「どうして、そんな
どうでもいいような事
聞くの?」
「知りたいからだろ?」
「何を?」
今度は、和也の方が
なんでそんな
分かり切った事を
聞くのだろうと
不思議そうな顔をした。
「せっかく
隣りに住んでんだし、俺は
仲良くしたいと思ったよ。
そう思った人のこと
知りたくない?
知らないから
聞いてんだよ?」
「私の事を、知りたいの?」
「そうだよ、変なの~
そんなの聞かなきゃ
分かんないじゃん。
黙ってて分かんの?」
「でも、どうでもいい
事ばっか、話してるよ?」
和也は、私の事を
知りたいと言った。
黙っていては分からないと
だから
聞いてんだよ?って…

