白い翼と…甘い香り


買う気もない洋服を見ながら
誰かに…

誰にでも良いから
2人で居ることを
見せつけているみたいに
私をそばに置いて離さない。

恋人の洋服を見立てて
自分好みの洋服を勧める
幸せそうな2人…

確かに今
誰が見てもそんな雰囲気の
中に居る2人なのに

それはどこか
作られた世界のようで

本物なのに
いつか消えてしまう
時間のようだなって

和也がそう感じて
いるんじゃないかと思えて

笑顔の向こう側を見るのが
恐くなってしまう。



もちろん
「この服を買って!」
と言えば
和也は喜んで買ってくれる。

そんな事は
分かっているけど

「買って!」と
私が言わないことも
和也は知ってる。

どこかで
線を引いてるのかも
知れない。


和也の好みは
何となく分かっても

どんな基準で服を選び
行きつけの店はどこで

いつも履いてる
お気に入りのジーンズが
何インチなのか

ホントは知らない。

何もかもを
知ったつもりでいても
いつまでたっても
知り得ない部分がある。


「この冬は、こんなストールが
流行るんだって」

無邪気にそう言う和也の隣で
「ふわふわで暖かそうだね」
と笑って言いながら…



ストールを巻ける季節には
自分がもう
ココに居ないと…

和也の隣に
私は居ないんだと

気持ちが振り出しに
戻るような事を思い出す。

思い出を増やす方が幸せなのか
これ以上増やさない方が
せめて、救われるのか…

それさえ
判断が出来ないような
苦しい気持ちになった。