白い翼と…甘い香り


「このワンピ
リカに似合いそう」

「えぇ~??
こんな短いスカート?」

「そんな短くねぇじゃん」

「でも、すっごい大人っぽい
美人じゃないと似合わないよ」

和也はマネキンを遠目に眺めて
今度は
背中へ回り込んでじっと見てる


「ね、リカ、見てよ
背中がすっげぇセクシー」

何だか
少し弾んだ声で私を呼ぶ。

マネキンの
背中へ回り込んでみると

大きくザックリと開いた背中に
ドレープを上手く組み合わせて

胸元は
シックに詰まっているのに

開いた背中と
スカートのスリットが
とてもセクシーな
ワンピースだった。

細く締まったウエスが
見ただけでも
私には無理だって分かる。

「ねぇ、これって
サイズは何号なのかしら?
有り得ない細さ…」

「でも、リカにはこういうの
似合うよ?」

笑いながら
冗談なのか本気なのか
分からないような顔で言う。

店員さんに聞いてみると
飾られていたワンピースは
7号だった。

とてもとても、無理…

「こんな素敵なのが
着こなせるなら
私はモデルになってたよ」

和也はクスクスと笑いながら
7号と聞いて
目を丸くした私を眺めてる。

店員さんに
「ありがとっ」と言って
また私の手を取って歩き出す。


「絶対ああいうワンピ
リカに似合うよ。
けど、やっぱ
普段着のリカが好きかな」

「……?」

「自然なままが、1番好き」

独り言のように言いながら
繋いだ手をほどいて

その手を今度は腰に
添えるようにして歩き出す。

目的もなく欲しい物もなく
ただブラブラと歩きながら

あっちこっちの店を覗いて
「リカの好きそうな服だな」
とか
「これは似合うよ?」
なんて言ってる。

店員さんに話しかけて
値段を聞いたり
私に合うサイズかどうかを
確かめたり…

和也が、笑って振り返るたびに
少し苦しくなる。

今の時間を
ものすごく楽しんでるのが
痛いほど分かる。