カフェを出ると、大通りに
向かって2人で歩き始めた。
特に変わった街ではなく
どこでも見掛けるコンビニや
ファーストフードのチェーン店
大きなデパートの名前も
聞いたことのある
馴染みのある物ばかりだった。
でも、見慣れた景色とは
少し違う町並みが
私たちをワクワクさせた。
大通りを外れて少し
裏道りを歩くと
その街の雰囲気が
良く分かるからって
和也はわざと
細い路地を入ってみたりして
ただ街の中を歩くだけで
何もかもが新鮮で
とても楽しかった。
大きな駅の地下街を歩くと
小さなショップが
たくさん並んでいて
ご当地物の土産を見て笑ったり
首をかしげてみたり
見慣れないお菓子を
味見してみたり。
ただ、ブラブラしてるだけ。
特に買う物も無かったし
欲しい物も無かった。
ただ、欲しいのは
和也と過ごす時間…
楽しくて幸せで
思い出をたくさん
詰め込むみたいに
笑っていられる時間が
少しでも多く、欲しかった。
今度は、地下街から続く
デパートに入ってみる。
1階には
どこも同じような土産物が並び
珍しい食品や、華やかに
包装された贈答品が並んでる。
2階、3階と上がりながら
名前は知ってるブランド物の
ブティックを眺めていると
和也は立ち止まって
1体のマネキンをじっと見てた
「何、どうしたの?」
「このマネキン
ちょっとタイプかも」
「は?」
「冗談…」
真顔になった私に、和也は
アハハと楽しそうに笑う。
当たり前すぎるほど
スタイルが良いマネキンは
黒いシックなワンピースを着て
ポーズを決めていた。

