「どっか探してみる。
平日だし、どっか空いてるよ」

「泊まれるところ?」

「そうだよ、車の中で
寝る訳にいかねぇじゃん」

和也と、星を見上げながら
車で寝る…

それも楽しそうだと想像した。


狭い車内の中で
足も満足に伸ばせなくて

でも、窓から見える空には
満天の星が見えたりしてね。

何もしないで、空を見上げて
手を繋いで寝るのは
とても幸せそうな気がした。


「何で、ニヤニヤしてんの?」

「車で寝るのも
いいなぁ~って想像してたの」

「リカは何でも
楽しい方に考えんだな。
車で寝たら、狭くて
身体中痛くなっちゃうよ?」

「でも、きっと楽しいよ?」

「俺が、居るからだろ?」

「違うわ、私が一緒に居るから
和也が楽しいんでしょ?」

呆れた目を向けるように笑って

「ハイハイ、分かったから
早く着替えの用意して来いっ」

そう言って、アゴを
玄関の方へ向けるようにして
「早く行け」という動作をする



笑いながら楽しそうに
本当は外へ出掛けることを

1番に楽しんでいるのは
和也の方だと思う。


和也が
口に出さなかった気持ち

たくさんある事は知っている。

普通に
デートも出来なかった。


2人並んで街を歩くこと
それさえも
いけない事のように思えて

いつも隠れるように
この部屋でしか逢ってなかった

映画を見たかったり
買い物をしてみたかったり
そんな些細な事も避けてきた。


私たちの2人の気持ちが

まるで

「裏側」の部分で
あるという事を

認めるみたいに…