「私の部屋と
間取りが逆なんだね」
「そうなんだ?」
「うん、多分。
あっちの扉が寝室でしょ?」
「そうだよ」
「ならやっぱり
同じ間取りで、位置が逆
そんな感じだね」
「ふぅ~ん」
キッチンに立つ彼と
食卓に座ってる私
誰かに
料理を作ってもらうなんて
何年ぶりなんだろう…?
「ねぇ
料理するの好きなの?」
「ヒマがあったらするよ
嫌いじゃないし」
「男の子なのに?」
「アハハ、それ変じゃね?
男も女も関係ねぇじゃん」
そっか…
そんな考えの男も
居るんだ?
不思議な、感じ。
見ていると
上手ではないけど
器用な手付きで
薬味を刻んでいる。
包丁も
多少は使い慣れてるようで
言ってる事が
ウソじゃないと分かる。
彼は
茹で上がったお蕎麦を
テーブルに運び
向かい合って座ると
「この部屋に来てくれた
最初のお客だよ」
なんて言いながら
真っ直ぐな目で私を見る。
そういう視線には
慣れてなくて
「誰かさんのせいで
締め出されちゃったから
仕方なくね」
と、視線を逸らせた。

