かすかに
ほんの微かに、首筋から
香水の残り香が香ってきた。

ふと、ドアを開けた瞬間に
流れ込んできた
懐かしいような香り

どうして
懐かしいと思ったのか

キスをしながら

それをどこかで嗅いだのだと
思い出そうとするのに

やっぱりどうしても
思い出せなかった。



「ねぇ
今は香水つけてないの?」

和也の首元に
鼻を寄せて聞いてみた。


「香水?
さっきシャワーしたから
消えてんじゃね?」

「そっか…」

「何?
あの匂い、何かあんの?」

「ん…、どっかで
嗅いだと思うんだけど」

「そう?
持ってきてみよっか?」


そう言って立ち上がると寝室の
ドアを開けて入って行った。

だから
私も後ろから付けて行く。


「なに、こっち来たの?」

部屋に入った私を見て
笑いながら、その表情に

私を咎めている様子は
微塵も無かった。

だから
寝室の中を観察してみる。


「どうして1人で
ダブルベットなの?」

「女の人を引っ張り込んでも
困んねぇから」

「そうなの!?」

和也の脇腹を肘で突くと
いてっ!と言いながら

「ウソだよっ
寝相が悪いだけだって!」
と笑う。