「やだぁっ」
幼稚園ではずっと泣き続け、伊織を探した。
もちろん、見つかるはずかなくて。
先生の手をやかせたことをよく覚えている。
でも、当時はそんなことよりも、伊織がいないことの方が重大だった。
幼稚園から帰っても、まだ伊織は家に帰っていなくて。
余計に寂しさが募った。
「いおくん、っどおしていない、のっ…?」
伊織のおばさんに尋ねても、答えは1つ。
「ごめんね、ゆずちゃん。伊織はもう、小学生になったから、ゆずちゃんとは違う所に行かなきゃならないの」
ー…゛違う"。
また、言われた。
私はまた泣き出した。
それから、何時間かが過ぎ。
私は泣き疲れて、伊織の家で眠っていた。
「ただいま」
「おかえり、伊織」
…いおくん?
私は目をこすって立ち上がり、玄関に向けて歩き出した。
足が止まる。
目の前には、一日中捜していた伊織の姿。
私は、一目散に駆け出した。

