「だいたい、あんたどこ行ってたの?
帰ったかと思った」


歩きながら龍神と車に向かう。


「あぁ、あの女子達まいてた。しつこくてさ。
『一緒に帰ろう?』だの、『帰りになんか買ってかない?』だの…。
俺には大事なお嬢様を守るって死命があるんだっての」

「ぷっ!!」


『』の部分は女の子の口調を真似していった。

思わず笑ってしまう。

朝のことなんてすっかり忘れてた。


「ん?ていうか、“大事なお嬢様”って私?」

「他に誰がいるんだよ…」


龍神が呆れた口調で言う。

ていうか呆れてる。

そしてそのままさきさきと歩いて行ってしまう。


「ま、待ってよ、龍神!」


私もその背中を追う。

なんだか、いつもより大きくて頼もしい背に見えた。


龍神が正門を出る。

そして振り向き深々とお辞儀をした。


「お嬢様、学校では私のことは『龍神』ではなく『翔』とお呼びください。
私だけお嬢様を呼び捨てにすることはでいません」


さんざん『悠乃』って呼んでたくせに今頃か!

…まぁ、いっか。


「わかったよ、……翔」


私も翔の後を追って正門を出た。