一番近くに君が居る



直哉は、その扉の前へと足を進める。

教室の扉にはちょうど頭の位置程の高さにガラスの窓がはめ込まれていて、そこからはココの後頭部がハッキリと見えていた。恐らく慌てて扉を閉めた後、扉に寄りかかったまま窓の存在を忘れてしまったのであろう。

扉の前で足を止めた直哉は、大きく深呼吸をした。


「…ココ?」


その言葉に、扉の向こうのココの身体が小さく跳ねる。


「ここを…開けてもいいか?」

「……」


ココからの返事はない。開け無いで欲しいと、そういうことであろうか。


「…嫌なら開けない。嫌なら何もしないでそのまま帰る。…ココは、どうしたい?」

「……」

「なぁ…なんで俺の手を掴んだんだ?」

「…っ」


口を閉ざしたままのココに一つだけ、戻る前に一つだけ尋ねておきたかった言葉を口にした。するとココはまた小さく反応を返す。やっぱり何かあるんだと、直哉は確信した。