そこはまるでひとつの世界だった。



見渡すかぎり、人。



道を様々な服に見を包んだ人々がごった返し、その話し声は騒音となって耳を襲う。


たくさんの商店が軒を連ね、客を呼び込む声や客の値切る声でにぎわっている。



しかしなによりも、その景色は華やかだった。


街中に花があふれていた。


真っ白の壁のたくさんの建物の窓には、必ず色とりどりの花が飾られ、視界は色にあふれていた。






「………すごいですね。」


そうシギは思わずつぶやいていた。

今までたくさんの街を旅してきて、ただでさえ世界の広さに圧倒されていたというのに、この街の大きさは他と比にならなかった。


あれだけ街道を歩いてきて、あと少しだと思っていた王城も、歩けど歩けど近づく気配がない。

しかし、さっき城下町に入って、わかった。


城下町の広さ。



城までたどり着くのに丸一日かかるのではないかというほどそこは広かった。




感心して呆然とするシギの隣で、レイシアは逆にとても冷めた瞳で目の前の町並みを観察していた。


シギはひとしきり感動してから、

「はじめはどこを目指すんです?」

とレイシアに振り向いて聞く。



それにまだ街をじっと観察していたレイシアがシギを一度見つめ、

「そうですねぇ……」

と、考えこむように空を見上げる。



シギが大人しく答えを待っていると、レイシアはぽんっと手を打ちシギを見る。


「それでは、はじめはシャムルを観光しましょう。」




それに、

「シャムル?」

とシギが聞く。


するとレイシアは、ああと気づいたような顔をして話しはじめる。



「シャムルというのは、この城下町の名前です。

といっても城下町すべてのことではなくて……

この王都は一番高い場所の王城を中心として丘のようになっていて、一番王城に近い地区は貴族たちの住む区画になっているんです。

その下に広がるのが、この一般市民の住む居住区や商店のある街なんです。

その一般区域をシャムルというんですよ。」