『師匠。』




『レイか。なんだ?』



『師匠たちは王都へ行ったことはあるんですか?』



『………ああ。』



『どんなところなんです?』



『……そうだな。とても広くて、美しい…と思う。』



『思う?』



『…ああ。あまり、はっきり覚えていないんだ。』



『そんなに昔なんですか?』



『昔……だな。とても、昔だ。』


『そうですか…。』



『………………レイ。』



『はい?』



『……何を見ても、たとえそれがどれだけ酷く惨いものであっても、まずは目をつぶれ。』



『………』



『目を閉じて、世界の広さを思い浮かべるんだ。』



『世界……。』



『そう。そうすれば、目の前のものがなんであれ、小さく見える。』



『……はい。』



『それだけは、覚えておけ。』



『はい。』









「……カリア。」



「え?」

思わずつぶやいた言葉にシギが聞き返してくる。


しかしそれには答えず、ただその亡き師匠に瓜二つな顔を見て微笑む。


「やっとあのとき…あなたが思い出していた景色を…美しく惨い世界を見られます。」


それにシギは今度こそ首を傾げるが、それには答えずただただ微笑んだ。