それにシギは少し心配そうな顔をしてから、

「ルシール。」

と呼ぶ。


それにルシールがシギのほうを見ると、ルシールの身体が突然ふわりと浮き上がる。


「えっ?!」


ルシールはいつの間にかシギに抱き上げられていて、シギは器用にルシールを自分の背中に乗せる。


おんぶをされるような状態にルシールが目を白黒させていると、

「なかなか丘に着かないな。」

と言いながらシギは歩き始める。



「えっ?!ちょっとシギさん!
重いから降ろしてくださいっ。」


と言うが、シギは頭だけ振り返りルシールを見て、

「いいから、大人しくして。
重くないし、平気。」

と言う。


それにルシールは大人しくなり、シギの背中に身体を任せる。

ちょっとふて腐れたまま、

「力持ちなのね。」

と言うルシールにシギは笑い、

「それほどでも。」

とおどける。


ルシールもそのシギに思わず吹き出し、2人は笑いながら森を進んだ。




丘の手前でルシールはシギから降り、2人で駆け回りながら丘を登る。


笑いながら登ったおかげで、丘のてっぺんに着いたときには2人とも倒れるように草原に膝をついた。


「あはは、は、はは。はあー…
も、う…動けない……」

ルシールがそう言って草原にねっころがると、シギもその隣で仰向けになる。

「はあ、はあ…
ほんとに、疲れた……」


しばらく息が整うまで、2人は無言で空を見上げた。



「こんなに高いところに来たの、初めて。」



ぽつりと言うルシールに、シギが顔を向ける。


「いつもトクルーナと王都の城下町にしかいなかったから。
空が、近いね……」

と言ってルシールは空に手を伸ばす。



それにシギは立ち上がる。


ルシールに手を差し出し、

「立って。」

と言う。


ルシールはその手をとりながら、

「なに?」

と聞くが、シギはルシールをふわりと引っ張り上げながら、

「秘密。」

と言った。