zinma Ⅲ





ルシールは庭の花たちの世話をしていた。

火よけの帽子をかぶり、雑草を抜き、枯れた葉を取り除く。

花によっては、支え棒を脇に刺してやり、形を整える。


ルウも一生懸命草むしりをしてくれて、今年のこの季節も、良い花が咲きそうだ。


ルシールがしゃがみっぱなしの腰を伸ばそうと、立ち上がる。

手の甲で汗をふき、一息ついていると、宿からシギが出ていくのが見える。




いつもより少し雰囲気が違うような気がする。

いつも凛とした大人びた雰囲気なのに、いまはどことなくか弱いような、普通の16歳の少年に見える。



その後ろ姿を見つめていると、

「ねーさん!」

とルウが呼ぶので、はっとして振り向く。


ルウはいつになくにこにこと笑っていて、どこかおかしい。


「……なに?ルウ。」


と聞くと、ルウは突然、


「きゃー一!」


と叫び、はしゃいでまわる。

その突然の行動にルシールがびっくりしていると、


「姉さんったら、もぉ!
かわいいんだからあ!」


と言ってじゃれついてくる。

「ちょ、ちょっと!ルウ。
あんまり暴れないで。花が潰れちゃう。」

そうルシールが言うと、跳ね回るのを止める。

だがうずうずした様子で、

「それで?姉さんどうなの?」

と聞いてくる。


「どういうこと?」


とルシールが聞き返すと、

「どういうこと、じゃないよ!
シギさんのこと好きなのかって話!」

とルウが言うので、ルシールは思わず持っていた農具を取り落としそうになる。


「な、何言ってるの?」


かろうじてそう言うが、ルウはまだにやにやと笑いながら、

「んもぉ!素直じゃないなあ。
顔が真っ赤だよ?」

それにルシールは自分の顔を両手でおさえる。


「ふふ。花のことは私がやっておくから、シギさんのこと追いかけて!」


ルウはそう言って、ルシールが被っていた帽子をとる。


「え?でも……」

とルシールが言うが、ルウはルシールの背中を押して花畑から追い出すと、にこにこと笑って手を振った。


ルシールはそれに半ば気圧され、シギを追った。