ルシールは庭の花たちの世話をしていた。
火よけの帽子をかぶり、雑草を抜き、枯れた葉を取り除く。
花によっては、支え棒を脇に刺してやり、形を整える。
ルウも一生懸命草むしりをしてくれて、今年のこの季節も、良い花が咲きそうだ。
ルシールがしゃがみっぱなしの腰を伸ばそうと、立ち上がる。
手の甲で汗をふき、一息ついていると、宿からシギが出ていくのが見える。
いつもより少し雰囲気が違うような気がする。
いつも凛とした大人びた雰囲気なのに、いまはどことなくか弱いような、普通の16歳の少年に見える。
その後ろ姿を見つめていると、
「ねーさん!」
とルウが呼ぶので、はっとして振り向く。
ルウはいつになくにこにこと笑っていて、どこかおかしい。
「……なに?ルウ。」
と聞くと、ルウは突然、
「きゃー一!」
と叫び、はしゃいでまわる。
その突然の行動にルシールがびっくりしていると、
「姉さんったら、もぉ!
かわいいんだからあ!」
と言ってじゃれついてくる。
「ちょ、ちょっと!ルウ。
あんまり暴れないで。花が潰れちゃう。」
そうルシールが言うと、跳ね回るのを止める。
だがうずうずした様子で、
「それで?姉さんどうなの?」
と聞いてくる。
「どういうこと?」
とルシールが聞き返すと、
「どういうこと、じゃないよ!
シギさんのこと好きなのかって話!」
とルウが言うので、ルシールは思わず持っていた農具を取り落としそうになる。
「な、何言ってるの?」
かろうじてそう言うが、ルウはまだにやにやと笑いながら、
「んもぉ!素直じゃないなあ。
顔が真っ赤だよ?」
それにルシールは自分の顔を両手でおさえる。
「ふふ。花のことは私がやっておくから、シギさんのこと追いかけて!」
ルウはそう言って、ルシールが被っていた帽子をとる。
「え?でも……」
とルシールが言うが、ルウはルシールの背中を押して花畑から追い出すと、にこにこと笑って手を振った。
ルシールはそれに半ば気圧され、シギを追った。



