「師匠。見えてきました。」
木の上に座るシギが、少し大きな声で言う。
するとそれに下のほうから、
「やっぱりこっちで正解でしたね。
もういいですよ。」
と言う声が聞こえる。
それにシギは階段を降りるような軽い足取りで木を降りる。
すると木の下に、レイシアが待っていた。
レイシア・リール。
シギの師匠である。
「だからこっちだと言ったでしょう。」
とレイシアが笑うので、
「ですが突然師匠が街道を外れて森に進み出したら、だれだって慌てます。」
と言うと、それにまたレイシアは笑う。
「あの街道はずいぶん遠回りする形でしたから、近道しようと思っただけです。」
と言ってにこにこと笑う自分より少し背の低いレイシアを見て、シギはため息をつく。
「さすがです。
とにかく、行きましょう。」
シギは木の根本に置いた荷物をかつぎ、歩く。
「ずいぶん旅人らしくなってきましたねぇ。」
と言うレイシアにシギは軽く頭を下げ、
「ありがとうございます。」
と言う。
もう旅に出て半年は経つ。
そのうちの2ヶ月ほどは修行をしていたが、それでももう慣れてきた。
いまは王都へ向かう途中である。
北の街を街道沿いに渡り歩き、南にある王都に向かって2人は歩いているのだ。
3日間の野宿を経て、やっと次の街が見えてきたところだ。
「次の街はたしか……」
とシギが言うと、レイシアが答える。
「トクルーナですね。
花と水の都と呼ばれる王都の町並みにあふれる花は、ほとんどがトクルーナから出荷されたものです。
トクルーナの住民はどこ家庭でも広い庭を持っていて、全員が花を育てることを職としています。
とても美しい村だそうですよ。」
すらすらとそう説明するレイシアにシギは素直に感心する。
今まで通ってきたいくつかの街のすべてについてレイシアは詳しかった。
「なるほど。それは楽しみです。」
とシギは言い、2人はトクルーナへ向かった。



