zinma Ⅲ






「それは君だって同じだろ?

今回の『神の犬』がなかなかだってことは、なんとなく風の噂で聞いてはいたけど。

まさかレイシア・リールがそうだったなんてね。」



人の良い笑顔から、わずかに陰りのある笑みになってマイルがつぶやく。

レイシアは中身のない微笑みを浮かべたまま暗い街を見下ろし、独り言のようにつぶやく。




「『神の犬』、ね…………。

『呪い』のみなさんも、なかなか言ってくれますよ。」



マイルはレイシアを少し敬遠するように目を細めて、言う。



「………ああ。『白呪の民』の側では、そうは呼ばないんだったね。

『選ばれしヒト』、だっけ?」


鼻で笑ってそう言うマイルに、レイシアは驚いたように目を見開いてマイルを見つめる。



「『白呪の民』の名も知っているとは……

あなたは本当に『呪い』と馴染んでいるようですね。」


「まあね。
なぜかはわからないけど、ずいぶん気に入ってもらえたみたいだなあ。

いろいろ知ってるよ。

君の名前も、いくつもあるみたいだね。」


その言葉に、レイシアはまた微笑んで目の前の空間を見つめた。

そのレイシアの様子を横目で見ながら、マイルは続ける。



「『神の犬』って名前が一番耳に入るけど、『選ばれしヒト』もよく聞くかな。

そして………」



レイシアの横顔を見つめ、マイルはわずかに口の端を上げる。








「『神魔』。」













マイルの言葉に、自分の中にある大きな存在が、大きく脈打つのを感じる。


今まで止まっていたんじゃないかと思うくらい、心臓が激しく動きだし、熱い血が体中を駆け巡った。



「…………『神魔』、ね。

久しぶりに聞いた名前です。」



あくまでも静かな声で言うレイシアに、マイルが声を上げて笑う。


「あはは!無理しなくてもいいじゃないか。

君の中のヤツが、今暴れ回っているんじゃないのか?

まったく、君もとんだ化け物を入れられたもんだね。」


まだくすくすと笑い続けながら言うマイルに、だがレイシアは今だ静かなままだった。



そのレイシアをまた見下ろすように見つめ、マイルは少し声を真剣なものに落とし、言う。



「だけど、君は知らないんじゃないかな?

君は今までにないほど、世界中の『呪い』に注目されてるんだよ。」


「私がですか?
それはまたなぜ?」