その言葉にマイルの眉がぴくりと動く。
「………なぜ奴をかばう?」
「別にかばうわけではありませんよ。
ただ、人を殺してあなたに力をつけられては、吸収したあとに私のこのニンゲンの身体が壊れてしまうので。」
両腕を広げて身体を見せるようにしながら言うレイシアに、マイルは鼻で笑う。
「………その身体も、だいぶガタがきてるみたいだね。
『神の犬』もいろいろ大変だなあ。」
人事のようにため息をつくマイルに、レイシアはまた笑う。
マイルの態度はいたって紳士的だった。
ただ、『呪い』に侵されて暴走する契約者とはちがうようで。
『呪い』を上手く手なずけ、理性を保っている。
それだけマイルの契約者としての器が、大きかったということだ。
「まあ、昔の馴染みの君との縁に免じて………
いいよ。」
「え?」
そのマイルのつぶやきに、今度はレイシアが驚いた顔をする。
そのレイシアを見てまたマイルが笑う。
「はは!なんて顔するんだよ!
別に僕はこの『呪い』に執着はないからね。
奴が現れたら、これは大人しく君に渡すよ。
君なら、僕よりも目茶苦茶にブルゴアを潰してくれそうだしね。」
笑いながらそう言うマイルに、レイシアが顔をしかめる。
「………本気ですか?
あなたは『呪い』を失えば……」
そのレイシアの言葉に、マイルも真剣な顔になり、うなずく。
「僕がどうなるかくらい、僕が一番わかっている。
心残りはないさ。」
「しかし、ティラさんはどう………」
「それは君がなんとかしてくれるんだろう?」
「……………。」
黙り込むレイシアを見て、マイルは満足げに微笑む。
「ただし、条件があるんだ。」
「条件…………?」
「……………なるほど。そういうことなら、任せてください。」
マイルの話に、レイシアは静かにうなずく。
「君ならそう言ってくれると思った。」
そう言って微笑むマイルの顔は、禁忌を犯している犯罪者だとは思えないほど、穏やかだった。
「…………あなたのような人を失うのは、とても残念です。
まあその反面、契約者があなたであってよかったと思う自分もいますが。」
マイルの横に並んで腰掛けながら笑うレイシアに、マイルも笑う。



