3人は風のように駆けた。



ひたすら女神の痕跡をたどる。




夜中にあの森を出て、今は朝日がかすかに顔を出し、青白い光に世界が満たされていた。






「………さすがと言いますか、彼女の地理的な知識はすばらしいですね。」


すごい勢いで走りながらも、レイシアはまったく息を乱すことなくそうつぶやいた。


シギやダグラスの経歴を当ててみせたときにもレイシアは心から感心していた。

今回、女神の痕跡をたどってみても、彼女がかなりの知識を持っていることがわかる。


迷うことなく険しい道を避け、しかし遠回りな道も選ばず、最速でサムラへ辿り着ける道のりをたどっていた。

これだけ3人が走ってなかなか追いつかないのだから、すごい勢いで走り続けているのだ。



レイシアのつぶやきに、シギもうなずく。



「そうですね。彼女がいれば心強いでしょう。」


同じく息を乱さないシギが、紺色の髪をすごい速さで過ぎていく風に踊らせながら言う。

それにわざとらしく驚いた顔を浮かべたレイシアが、走っているというのにシギを見つめて言う。


「ん、それは彼女を旅に連れて行こうということですか?
ずいぶんと気に入ったんですね。」


シギはというと、呆れ顔になったシギがため息を吐きながら答える。


「はあ………。
そうではなくて、彼女は私たちのことを知ってしまったわけですから……」


「それは私が『干渉』を手に入れて彼女の記憶を取り去ってしまえばいいこと。
ちがいますか?」


少し意地の悪そうに笑いながら言うレイシアに、シギがいよいよ呆れたようにため息を吐く。



「………だから……私よりも彼女を気に入った人が他にいるでしょう?」


それにそれまで無言で考え込むように走っていたダグラスが振り向く。


「ん?まさか俺のことか?」



レイシアとシギが同時にうなずく。


「当たり前でしょう。
あなたは明らかにティラさんに思い入れがある。」

「ダグラスはわかりやすいですね。」



次々にそう言う2人に、ダグラスは一瞬黙ってから前を見た。



「……思い入れというよりは、気になるだけだ。
あんな子供が簡単に出歩けるほど易しい世の中じゃないのは、俺だってわかってるからな。」