突然響いた声に、ティラもシギも一瞬動きを止めて視線をそちらへ向ける。



「シギか?いったいどういう……」


わずかに息を切らして走ってきたのはダグラスだった。



「……………ちっ!」


ティラはもう一度自分に勝を入れ、双剣を振るう。

ティラと同様、ダグラスにシギが気を取られているうちに、一瞬動きの止まった木の根を根こそぎ切り飛ばす。


「なっ!」

シギが気づいたときには、ティラはすべての根を切ったところだった。




「…………あたしの勝ちよ。」


小さくそう言うと、ティラは双剣をすばやく腰の後ろへしまい、踵を返す。








「ティラ!!!!!!!」



突然ダグラスが地面を揺るがすほどの怒号を上げる。

ティラが思わず身体をびくつかせ、振り向く。


すると、状況をすべて悟ったように、顔をしかめて立つダグラスがティラをにらみつけていた。


しかし、

「ティラ。落ち着け。」


そう言ったダグラスの声は、いつもの穏やかなものに戻っていた。


「絶対に大丈夫だ。俺を信じろ。」


真剣な、しかし温かみのある瞳でダグラスがティラを真っすぐに見つめる。



それにティラが、

「………っ。」

泣きそうに顔を歪め、ダグラスを見つめる。



しかし、うつむいて唇をきつく唇を噛み締めたかと思うと、絞り出すような声を出す。





「……………の。」





小さすぎるその声に、ダグラスもシギも顔をしかめる。

さらにシギはダグラスの身体の影で、小さく魔法陣を描いていく。



そこでティラが顔を上げる。






その顔を見て、ダグラスもシギも思わず息を飲んだ。



そのティラの顔は



涙でぼろぼろに歪んでいて。








「ダグラスも兄さんも………
傷つけたくないの………っ。」











ティラはそう言うと、勢いよく踵を返し、森の中へと駆けて行った。