「ね、ところでさ。
レイシアってほんと強いよね!

どこで鍛えられたの?」



レイシアに追いついたところで、ティラがレイシアの顔を覗き込みながら言う。


レイシアはフードをかぶりなおしながら歩きはじめ、微笑む。


「立ち入った話をあなたにする義理はありませんよ。」



そのままティラを追いぬかして行くレイシアに、ティラは少し頬をふくらませる。



「なによー。
いいさ。シーフのあたしにかかれば過去を引き出すのなんて簡単なんだから。」


シギはそう言うティラを横目で一度見て、レイシアについていく。



「そんなことできるのか?」


ダグラスがため息混じりにそう聞くと、ティラは歩きながらダグラスの横に並ぶ。



「もっちろん。
あたし得意なんだ、そういうの。」


小柄な身体をのけ反らせ、大袈裟にえらぶるティラにダグラスが苦笑いを浮かべる。


「そうかそうか。
まあ、がんばれ。」



それにティラがまた頬をふくらませる。



「馬鹿にしてるの?

いいわよ!見てなさい。」



そう言ってティラは大股でずんずんと歩き、シギに追いつくと、顔を横から覗き込む。



「…………あんたは、そうね…。

名前からして北の民族の出ね。

服の刺繍からすると、クル山脈のあたりの遊牧民の村で育った。

でも髪の色は独特。

そこの本当の子供ではなくて、拾われたようなもんかな。

どう?合ってる?」



赤い瞳を上目遣いに、少しだけ不安げにシギを見上げる。


シギはめずらしく驚いたようにわずかに目を見開く。



「……なに?どっか間違って……」


「お見事。」



不安げにつぶやいたティラの声を、レイシアが遮る。



ティラがレイシアのほうを見ると、レイシアは振り返って微笑む。


「当たりですよ。
ほとんど完璧。」



それにティラの顔が一気に輝く。


「ほんと?!やったあー!!

ね!ね!ダグラスも見てたでしょ?」



ぴょんぴょんと跳ね回るティラに、ダグラスは思わず微笑む。


「ああ、見てた見てた。
すごいじゃないか。」



それにティラは嬉しそうな照れたような顔で笑い、軽い足取りでダグラスの横に戻ってくる。