「ねぇ!」




「…………。」



「ねぇったら!!」


「だああ、もうなんだ?」



ダグラスはもう我慢できずに振り返った。


ダグラスが振り返った先には、元気よく大股で歩く少女がいた。



少し小柄な身体に、軽そうな皮の防護パーツの組み込まれた服を着て、ショートパンツの下にはハイブーツを履いている。

栗色の首までの短い髪に、猫のように釣り上がった赤い大きな瞳を今は怒ったようにしかめていた。



「ねぇ!
あたしはあんたたちに名前を言ったのに、あんたたちは名乗らないわけ?

それって不公平よ!」


非難するようにダグラスのほうを指差して、その少女、ティラがきゃんきゃんわめく。



ダグラスは一度顔をしかめてから、目の前を歩く2人に助けを求めるような目を向ける。


するとそれに答えるようにして、先頭を歩く人が振り返る。



目深にかぶったフードを片手で軽く上げて、ダグラスに微笑む。


「まあ、名前くらいなら教えてもいいんじゃないですか?」


そしてフードを取り、彼が少女をまっすぐ見る。



「ティラさん。

申し遅れましたが、私はレイシアといいます。

レイシア・リール。
よろしくお願いします。」


そう言って黄緑色のような、水色のような不思議な色の瞳をやんわりと細める。



するとレイシアの近くを歩いていた人も同じようにフードをとって振り返る。



「シギ・サンです。
よろしくお願いします。」


金色の切れ長の瞳を無表情なままで、ぺこりとシギが頭を下げる。

首の後ろで束ねた紺色の長髪が、さらりと垂れる。




最後に、ダグラスが嫌そうに振り向いて、フードを取って言う。


「ダグラス・ディガロだ。
よろしく。」


深い色合いの碧眼を、めずらしく歪めてダグラスが言う。




それにティラは満足そうにうなずいて、それぞれを指差しながら言う。



「なるほどなるほど。

優しそうで恐いのがレイシアで、無愛想なのがシギ。

口うるさいおじさんがダグラスね。

了解りょうかーい。」


そう言って気ままに歩きはじめるティラに、ダグラスが長いため息をはく。