少女は冷や汗をかきながら何度も何度もうなずく。
それに納得したようにレイシアもひとつうなずき、ナイフをまたしまう。
ダグラスたちのいるたき火へ向かおうとして、立ち止まりレイシアは肩越しに少女のほうを振り向く。
「あなた、名前は?
もちろん、本名を。」
すると少女は一度びくりと体を震わせてから、答える。
「てぃ、ティラよ。
ティラ・ルーク。」
それにレイシアはさっきとは違うやわらかな微笑みを浮かべる。
「では、ティラさん。
一時的に、あなたを私たちの旅の仲間とします。
おとなしくしてくだされば、手荒な真似はしませんから、安心してください。」
それにティラと名乗った少女は、拍子抜けしたように肩から力を抜いて、驚いた顔をしている。
「夜は冷えますよ。
こっちで火に当たったらどうです?」
そう言ってたき火に向かってしまうレイシアの背中をしばらく眺め、ティラは一度安堵の息を吐く。
それからよろよろと立ち上がり、たき火へと向かって行ったのだった。
ーーーーー
ーー………さん。
ーー………兄さん。
ーー兄さん!!!
「起きてください。ティラさん。」
「……?!
…あ、…うん。ごめんなさい。」
「ほら、もう出発しますよ。
早く準備してください。」
「あ、わかった…。
ちょっと待ってて……。」
「なんだ?まだ寝ぼけてるのか?」
「ち、ちがう!
おじさんうるさいなあ……。」
「おじ………。
ああ、もういいよそれで。」
「落ち込まないでくださいね。」
「レイシア、顔が笑ってる。」
「はは、いえ、すみません。」
「お前らなあ………………。」
…………兄さん。
どくん。