少女はもうぽろぽろと涙をこぼして、それを止めようとするかのように目をきつく閉じてうつむいていた。
「師匠。」
シギが静かにそう呼ぶと、レイシアはダグラスとシギのほうを振り向いて、小さく、しかししっかりとうなずく。
それにシギは納得したようにまたたき火のほうを向いて、眠いのかまた別の理由なのか、また目を閉じる。
ダグラスはレイシアと少女のほうを向いて、静かに事の行き先を見つめていた。
「…………サムラね。
あまり行きたくはなかったのですが…。」
「え?」
レイシアのつぶやきに、少女が弾かれたように顔をあげる。
それを静かな瞳で見つめ返し、レイシアは言う。
「サムラに用ができたようです。
ブルゴア公爵には………
貸しもありますからね。
サムラへ、向かいますよ。」
レイシアはお手玉していたナイフを掴み懐にしまうと、しゃがんで少女を縛り付けていた縄を解く。
「え?な、なに?どういうこと?」
縄を解かれながら、全くわからないといった様子で少女が目を白黒させる。
レイシアは縄を解き終わって、それをくるくるとまとめながら答える。
「サムラへ向かうんですよ。
無事にサムラに戻りたいなら、サムラまでは送りますが……
どうしますか?」
少女はしばらく縛られていたところをさすりながらレイシアを丸い目で見上げる。
木がはじける音だけが響く。
すると突然、
「………えぇっ?!!
え、えっと、うそぉ?!
な、なんなの?
あんたもしかして良い人なの?
ていうかどうやって要塞を抜けるのよ!」
また少女が騒ぎはじめ、ダグラスは顔をしかめてため息をつき、またシギと並んでたき火に当たりはじめる。
レイシアは少女にまたにっこりと微笑むと、その笑顔のまま少女の首元にナイフをつきつける。
「縄がほどけたからといって、あなたの不利な立場は変わらない。
おとなしく言うことを聞くこと。
うるさくしないこと。
妙な問答はしないこと。
よろしいですか?」



