それに少女が顔を上げ、悔しそうな泣きそうな顔に歪める。
「サムラに連れていって何をする気かはわかりませんが、めどは立ちます。
サムラの領主といえば、王家の血縁だとかいうブルゴア公爵。
かなりの暴君です。
彼絡みで何かありましたね?」
それに少女が信じられないといった表情でレイシアを見上げる。
ダグラスとシギは静かにレイシアの言葉を聞いていた。
「西の要塞の向こうは、今ひどい飢饉にみまわれているはず。
ブルゴア公爵はおそらく、王家のコネを使って王家への納税を先伸ばしにした。
その条件というのが………
人身売買といったとこですか。」
「あ…あんた、なんで…………」
「サムラの人たちは税の変わりに人を捧げなくてはいけなくなった。
しかし家族を売りたくないがゆえに、旅人を拘束し、売る方法に出たんでしょうねぇ。
しかしそこで、サムラに何か異変が起きた。
なんでしょうね………。」
そこでレイシアはまたしゃがみ、少女を見上げるようにして見つめる。
「何が起きたんです?」
少女がレイシアを驚いたように見開いた目で見つめる。
そして、その赤い瞳から涙が、流れ落ちた。
「………領主様はおかしい。」
「というと?」
「はじめはみんな、旅人を売るなんてできなくて………」
「………。」
「領主様に引き渡したあと、みんなで助け出したりしてた…。」
「なるほど……。」
「でも……でもある日、それがばれて……」
「なぜです?」
「町長さんが……裏切った。
先頭に立って旅人を助け出してた人なのに…。
でも町長さん、様子がおかしかった。」
「どんなふうに?」
「……目がうつろで、人形みたいだった。
それから、領主様のとこに申し立てに言った人たちはみんなそうなって、旅人を助けられなくなった。」
「………。」
「人買いももっとひどくなって……。
あたしはサムラに旅人を送るために、出てきた。
逃げたんじゃない。」
「………。」
そこでレイシアは立ち上がり、ナイフをお手玉にしながら、考えるように目を閉じる。



