「それで?あなたの出身は?」
レイシアがこっちまで怖くなるような冷たい声音でそう聞く。
すると少女は文字通り目の前にあるナイフを緊張した様子で見つめながら、震えた声で答える。
「……さ、サムラよ。
西の軍の要塞の向こうの……。」
それにダグラスとシギが素早く視線を交わす。
「……サムラ?
どうやって要塞を抜けたんです?」
レイシアの言葉に少女がわずかに目を見開く。
「…え……あ、あんた、今、西がどうなってるか知ってんの……?」
「質問しているのはこっちです。
どうやって逃げ出したんですか?」
すると少女はわずかに唇を噛んで、さっきとは違う感情のうかがえる震えた声で小さく答える。
「……たまたまうまくいったのよ。
軍が定期的に運んで来る食料用の馬車に、隠れて。」
それにレイシアはしばらく黙り込む。
そして少女に突き付けていたナイフを離す。
「あなたの本当の目的はなんです?
サムラを出たのも、私たちを追ってきたのも、シーフとは関係なく何か別の目的があったんでしょう?」
少女はしばらく迷うようにレイシアの目を瞳を揺らしながら見つめ、しかし黙ったままうつむく。
レイシアは一度立ち上がり、腕を組んで少女を見下ろす。
少女は顔を上げることなくうつむいていて。
垂れる短い髪のすき間から、ダグラスは少女がきつく唇を噛んでいるのを見た。
レイシアはそれ以上何を聞くでもなく、ただ静かに少女を見つめていて。
「…………ゃない。」
「ん?」
わずかに聞こえた声に、ダグラスが思わず声を上げる。
「あんたたちには、関係ないじゃない。」
「…………。」
「…あたしはただのシーフ。
サムラのことが知りたいんなら、自分たちでサムラに……」
「なるほど。
それがあなたの目的ですか。」
少女の声を遮って言ったレイシアを、少女が驚いたように顔を上げて見つめる。
「あなたの目的は、サムラへ人を送りこむこと。
ちがいますか?」



