レイシアがそれににっこり微笑んで、
「こっちの世界にも随分慣れてきたみたいですね。」
と言う。
ダグラスはそれに肩をすくめるだけで答え、口を開く。
「どうせこっちの声もあの子には聞こえないんだろ?
なら問題ないな。
なぜあの子をここに来るまで放っておいたんだ?」
それにシギもうなずきながらレイシアを見つめる。
レイシアはどこから取り出したのか、ナイフの先に刺した干し肉を火にかざしながら言う。
「彼女は私たちがベルーシカを出た頃から着いて来ていましたが、なぜか彼女から『呪い』の気配が感じられました。
彼女自体が契約者である可能性はありませんが……
どこかで『呪い』に触れたのは確かです。
ならば少し泳がせてみようと思って放っておきましたが、逆に面倒なことになりました……。」
そう言って頭を押さえてため息をつくレイシアに、ダグラスも苦笑いする。
「もっと優秀なシーフのほうが逆に簡単にいっただろうな。」
それにレイシアが困ったように微笑むと、シギもうなずいてから言う。
「ああいう女性は苦手です。」
ダグラスがそれに思わず吹き出し、レイシアも小さく笑う。
「私もですよ。
しかし彼女、変に度胸が座ってるものですから、本当のことを言ってくれない。
ベルーシカ出身だとか言ってますが、それにしてはキニエラ族の血も薄いようですし、何よりベルーシカに『呪い』はなかった。」
シギがそれに切れ長の瞳を、ちらりと少女のほうへ向ける。
「さっきのように脅せばいいんじゃないですか?」
するとレイシアは驚いたような顔をシギへ向け、
「驚きですね。
あなたは女性に対しての扱いにはうるさい方だと思っていたので、遠慮していたんですが。」
と言う。
「遠慮したやつがナイフを何回も投げつけるか?」
ダグラスがため息混じりに独り言のようにつぶやくが、シギが気にせずレイシアに答える。
「そりゃあ女性に手荒な真似はしたくありませんが、今回は仕方ないです。
それにあの性格なら多少怖い思いをしないと聞かないでしょうし。」



