zinma Ⅲ





レイシアがそれににっこり微笑んで、

「こっちの世界にも随分慣れてきたみたいですね。」


と言う。



ダグラスはそれに肩をすくめるだけで答え、口を開く。


「どうせこっちの声もあの子には聞こえないんだろ?

なら問題ないな。

なぜあの子をここに来るまで放っておいたんだ?」


それにシギもうなずきながらレイシアを見つめる。



レイシアはどこから取り出したのか、ナイフの先に刺した干し肉を火にかざしながら言う。




「彼女は私たちがベルーシカを出た頃から着いて来ていましたが、なぜか彼女から『呪い』の気配が感じられました。

彼女自体が契約者である可能性はありませんが……

どこかで『呪い』に触れたのは確かです。

ならば少し泳がせてみようと思って放っておきましたが、逆に面倒なことになりました……。」



そう言って頭を押さえてため息をつくレイシアに、ダグラスも苦笑いする。



「もっと優秀なシーフのほうが逆に簡単にいっただろうな。」


それにレイシアが困ったように微笑むと、シギもうなずいてから言う。


「ああいう女性は苦手です。」



ダグラスがそれに思わず吹き出し、レイシアも小さく笑う。



「私もですよ。

しかし彼女、変に度胸が座ってるものですから、本当のことを言ってくれない。

ベルーシカ出身だとか言ってますが、それにしてはキニエラ族の血も薄いようですし、何よりベルーシカに『呪い』はなかった。」



シギがそれに切れ長の瞳を、ちらりと少女のほうへ向ける。


「さっきのように脅せばいいんじゃないですか?」



するとレイシアは驚いたような顔をシギへ向け、


「驚きですね。

あなたは女性に対しての扱いにはうるさい方だと思っていたので、遠慮していたんですが。」


と言う。



「遠慮したやつがナイフを何回も投げつけるか?」


ダグラスがため息混じりに独り言のようにつぶやくが、シギが気にせずレイシアに答える。



「そりゃあ女性に手荒な真似はしたくありませんが、今回は仕方ないです。

それにあの性格なら多少怖い思いをしないと聞かないでしょうし。」