それにシギも数回うなずく。



「なるほど。

でもやっぱり私はまだまだ未熟な17の子供です。」



ダグラスはそれを聞いて、思いついたように、ああと声を上げる。



「それじゃないか?

君が青年に見えないのは。

その、敬語だ。」



「敬語?」



シギが思わず頭だけ上げてダグラスを見上げる。



「なんでずっと敬語なんだ?」


ダグラスがそのシギを見つめると、シギは困ったように眉をひそめる。



「なんで………
考えたこともない。

ただ、いつの間にか敬語になっていました。」


それにダグラスは驚いたようにひょいと眉を上げる。


「軽い口調を使ったことはないのか?」



シギは少しダグラスの瞳を見つめたままだったが、すっと視線を外して小さく言う。



「…………一度だけ。」



ダグラスがそれにまた驚いた顔をするので、シギは気まずそうに瞳を閉じる。



「あなたには前にも言ったでしょう?

私には大切な人がいるんです。

トクルーナで私を待ってくれている人が。

その人には、敬語は使わない約束をしたので…………」



早口で、少し赤面しながら言うシギにダグラスは度肝をぬかれたように黙り込む。



気まずい沈黙……。





思わずシギが口を開こうとしたところで、




「…………くっ。はっはっはっ!!」




ダグラスが突然笑い始めるので、シギはいよいよ顔を赤らめてベッドから起き上がる。



「なっ!失礼です!
だからあまりこの話をしたくなかったんだ!」


腹を抱えて笑うダグラスに懸命に抗議しながら、シギはいらだたしげに前髪をかきあげる。




「はっはっ……っ。

ああー、いや、すまない。
ふっ。君もやるなあ!

確かに君ももう18になるんだ。

キニエラ族なら相手を探す年頃だ。」



そう言うダグラスにまだシギは顔を赤らめながらそっぽを向く。



「はは……っ。

なんだろうな、この感じは。

なんだか、安心したよ。」



それにシギが横目でダグラスを見る。


「安心?なぜです?」



ダグラスはそれにもう落ち着いたように小さく笑い、答える。



「君は少なからず危険な道を選んだ。

カリアとファギヌと、同じように険しい道程を、ね。

もしかしたら、君はその運命に取り付かれて、普通の幸せを知らずに生きていくのでは、と思っていた。」