シギは子供のように商品街を楽しんでいるようだった。


顔は無表情なのに、その瞳は明らかに輝いていて。



それにダグラスは薄く微笑みながら、店から店へと歩きまわるシギのあとを追った。






「おい!兄さん!
ムーレ湖で釣れた魚だ!新鮮だよ!」


「魚………そういえば長らく食べてませんね。」



シギがそう言って屋台に並ぶつやつやと輝く魚をながめると、店主の男が元気よく声をかける。



「どうだい?
どれも今朝届いたばっかの魚だ。

どれ、一匹焼いてやろうじゃないか。」




そう言うと店主は魚をしばらく眺め、これがいいな、と言って一匹の魚の口を掴む。



「え?いいんですか?」


シギがそう驚いて聞くと、


「かまわねぇよ。

兄さんはちょっと痩せすぎだ。

成長する年頃なんだから食べろ食べろ。」


そう言いながら、店主は屋台の向こうに置いてある簡易暖炉のようなものに火をつけ、串に刺した魚を火にかざす。



魚の焼ける良い香りに顔をほころばせて、


「ありがとうございます。」


とシギは礼を言った。











焼き上がった魚は本当に美味しかった。

丸々と太った身がほろほろと崩れては口の中で溶けていく。



シギとダグラスは屋台の裏側に通され、魚を入れてきたらしい木箱に腰を降ろして、串に刺したままの魚を頬張った。



「うまい!
久しぶりにこんなうまい魚を食ったよ。」



ダグラスがそう言うと、店主は盛大に笑いながら自慢げに答える。


「はっはっは!そうだろう!

このあたりはルーラの神様に守られた土地だからな。」


それにダグラスとシギは顔を見合わせる。


「ルーラ?」


「ルーラの神……
聞いたことはあるが……」


2人が不思議そうにそうつぶやくと、店主は驚いたように眉をひょいと上げる。


「なんだ、ルーラの神様の話を知らんのか?」



2人が素直にそれにうなずくと、また店主は大きく笑う。