静かな路地裏を抜けて、2人は大通りへと出た。




大通りにはたくさんの屋台が並んでいて、賑わいをみせていた。







「ミルドナに似ています……。」



人々のざわめきに掻き消されそうになりながら、シギは小さくそうつぶやいた。


ダグラスはそれに、ざわめきに合わせて少し声を大きくして答える。



「ミルドナ?
最北端の街じゃないか。

ミルドナへ行ったことがあるのか?」


シギは人ごみを縫うように進みながら、斜め後ろを同じように歩くダグラスを振り向いて言う。



「はい。
私はクル山脈の遊牧民の村から来たんです。

そこから師匠と旅をしたので、王都へ向かう道中にミルドナを通ったんですよ。」



それからまた雨を向いて少し声を上げてつづける。



「ミルドナもこうして商店が賑わっていましたから、なんとなく似ています。」


そう言うやいなや、この地の伝統のものらしい飾りや雑貨の売ってある屋台を見つけ、シギはそこへ向かう。



ダグラスもそれを慌てて追いかる。





「へー…

ほんとに風見鶏のお土産ばかりですね。」


「なんだ、旅人さんかい?

それならこのお守りなんかは……」



ダグラスが追いついたころにはなぜかシギはもう店の店主とすっかり打ち解けていて。


それにため息をつきながら小さく笑い、ダグラスは聞く。



「ミルドナか………

ミルドナっていったらつい半年くらい前に謎の崩壊をした街だろ?

レイシアもシギもよく無事だったな。」



シギはそれに店主から薦められた商品を持ったまま、肩越しにダグラスを見る。


それからなぜか、無表情な顔をいつになくにっこりとほころばせたりして。





「……………なっ!!

まさかあれもレイシアの……」



それにシギはまた店主のほうを向いて、



「これ、この風見鶏のネックレスをひとつください。」



と言うだけだった。





ダグラスはその横顔を呆れたように見つめ、

「ああ………
ちがう。そうだ。俺がいる世界はもうこういう世界。

慣れろ。慣れるんだ。」


と小さくつぶやいた。