シギはダグラスから石を受け取り、また大切そうにポケットへしまう。



「私は諦めない。

師匠はきっと人間の世へ戻ることができる。

いや、必ずそれを叶えてみせる。

それまで、私がこの石を預かります。」



そう言って少し目を細めるシギを、ダグラスはまぶしげに見つめる。



意志のこもった彼の金色の切れ長の瞳は、きらきらと光を放っていた。



その瞳はやはり。


やはりその瞳は、カリアにそっくりで………







「……そうか。

君なら…君なら、できるかもしれないな。」





ダグラスはそう言って立ち上がり、窓際へと歩いて行く。



窓の外にはやはりかわいらしい町並みが広がっていて、穏やかに吹く風に、様々な美しい風見鶏がぱたぱたと動いていた。





「………良い気分だ。」


「え?」



突然つぶやくダグラスに、シギが思わず聞き返す。


ダグラスは一度大きく伸びをして、答える。




「んー。

こんなふうに世界を自由に見つめるのは何年ぶりかな。

ずっと軍にこもっていた。

淡々と人の命を切る仕事をこなしていたのが、今では信じられない。」



窓から吹く風が、ダグラスの金色の短髪を吹き抜けていく。


町並みをうれしそうに、まぶしげに目を細めて見つめると、ダグラスはシギのほうを向いた。




「街へ出ないか?」



それまでダグラスを不思議そうに眺めていたシギが、少し驚いたように目を見開く。


「え?いや、でも………」



それにダグラスは声を上げて小さく笑う。



「はは、ただの気まぐれだよ。

散歩、しないか?」



まるで少年のようにそう言うダグラスに、シギはしばらく黙り込んでから薄く微笑む。




「………いいですね。
散歩に行きますか。」





ダグラスもうれしそうに、微笑んだ。