「楽勝でしたね。」
やっと昇りはじめた朝日に、街道が明るく照らされている。
街道をゆっくりと歩きながら、レイシアの言葉にシギがコートのフードを取りながらうなずく。
首の後ろでまとめた紺色の長髪が、さらりと垂れる。
「はい。
城壁の警備が甘くて安心しました。」
しかしその後ろを歩く男がそれに同じように、フードを取りながらため息混じりに反論する。
「楽勝?俺は肝が冷えた……。
もうこの旅に不安を感じる…。」
比較的長身なシギよりも、さらに大きい男。
ダグラス・ディガロだ。
金色の短髪に、思慮深そうな深い色合いの碧眼。
引き締まった、がたいの良い身体。
元大佐であるダグラスは、いまは軍服を捨て、動きやすい服とコートに身を包んでいる。
ダグラスの言葉にレイシアが笑いながら言う。
「はは、ああいう状況は日常茶飯事ですからね。
早く慣れてください。」
そう言ってレイシアはフードを取る。
毛先に少しだけ癖のあるプラチナ色のやわらかそうな髪が、ふわりと肩にこぼれる。
レイシアが肩越しにダグラスのほうを振り返り、その髪がきらきらと光りを反射しながら揺れる。
「立場上あなたが一番捕まると危険なわけですから、すぐに慣れると思いますけど。」
シギも同じように振り向き、
「大変ですね。」
と言って切れ長の金色の瞳をダグラスへ向ける。
3人は今軍の反逆者という名目で、軍に追われていた。
王家が滅亡を表明したはずのルミナ族の生き残り、シギがいるために、公にされて追われないことが唯一の救いだった。
おかげでどの街でも大きな顔をしていられるのだが、ただ軍の兵士たちには追われる。
さらにダグラスは元大佐でありながら逃亡しているので、第一級に追われているのはダグラスなのだ。
「人事のように言うな。」
ダグラスはため息混じりにそう言ってから、一度咳ばらいをして続ける。



