zinma Ⅲ





レイシアは真っ黒に塗り潰された左目でドープを見つめる。


ダグラスには心なしか、さっきよりも黒の血管が増えた気がした。




レイシアは右手でゆっくりと、恐怖に歪んだドープの顔を触る。

するとその右手にも黒い血管が浮き上がり、ドープの顔の横で大きく脈打つ。


「……まさか………生きていたとは……」



そうつぶやくドープにまたレイシアは小さく笑う。



「生きていましたよ。
あの監獄から抜け出して、クトルという村に2年間だけいました。」


その言葉に次はダグラスが反応する。


「…ぇ……?クトル………?
クトルというとあの………」

「言うんじゃない!!!!」


ドープがダグラスの言葉を遮るが、しかしそのドープをレイシアは冷たい瞳で見る。



「何を言ってはいけないんです?

ああ、あれですか。
クトルが全滅したという話ですか?」


そう言うレイシアを、ドープはもう絶望したように見つめる。



「はは、私が何も知らないと思ってるんですか?

クトルは全滅した。
しかし軍の兵も全滅した。

何があったんです?」



しかしドープもダグラスもただ震えて声を出すことができない。


すると突然、レイシアがダグラスのほうへ右手を向ける。

それにダグラスが反応するのよりも先に、何かに背中を押され、ダグラスは前に吹き飛ぶ。

そのダグラスをレイシアは掴み、ドープの横に座らせる。


そうして振り返ったところでダグラスは信じられないものを見た。



石像が立っていたのだ。



さっきダグラスがいた場所に。



石像というよりは、人の形をした石の塊だ。

女性にも見えるその姿。



それが真っすぐにこちらを見つめている。





「あなたもご存知でしょう?
クトルのことを。」


ダグラスを無理矢理座らせて、レイシアが静かに聞く。

まだ黒く染まっていない彼の右目は、恐ろしく冷たい色をしていた。