レイシアは真っ黒に塗り潰された左目でドープを見つめる。
ダグラスには心なしか、さっきよりも黒の血管が増えた気がした。
レイシアは右手でゆっくりと、恐怖に歪んだドープの顔を触る。
するとその右手にも黒い血管が浮き上がり、ドープの顔の横で大きく脈打つ。
「……まさか………生きていたとは……」
そうつぶやくドープにまたレイシアは小さく笑う。
「生きていましたよ。
あの監獄から抜け出して、クトルという村に2年間だけいました。」
その言葉に次はダグラスが反応する。
「…ぇ……?クトル………?
クトルというとあの………」
「言うんじゃない!!!!」
ドープがダグラスの言葉を遮るが、しかしそのドープをレイシアは冷たい瞳で見る。
「何を言ってはいけないんです?
ああ、あれですか。
クトルが全滅したという話ですか?」
そう言うレイシアを、ドープはもう絶望したように見つめる。
「はは、私が何も知らないと思ってるんですか?
クトルは全滅した。
しかし軍の兵も全滅した。
何があったんです?」
しかしドープもダグラスもただ震えて声を出すことができない。
すると突然、レイシアがダグラスのほうへ右手を向ける。
それにダグラスが反応するのよりも先に、何かに背中を押され、ダグラスは前に吹き飛ぶ。
そのダグラスをレイシアは掴み、ドープの横に座らせる。
そうして振り返ったところでダグラスは信じられないものを見た。
石像が立っていたのだ。
さっきダグラスがいた場所に。
石像というよりは、人の形をした石の塊だ。
女性にも見えるその姿。
それが真っすぐにこちらを見つめている。
「あなたもご存知でしょう?
クトルのことを。」
ダグラスを無理矢理座らせて、レイシアが静かに聞く。
まだ黒く染まっていない彼の右目は、恐ろしく冷たい色をしていた。



