ダグラスとドープはもう目の前にいる大きな存在に身動きができないでいた。
瞬きさえ許されないような存在。
それにドープが震える声でなんとか言葉を絞り出す。
「る、ルミナ族のことは、ほ、本当にすまなかった……!
だ、だがあれは、私たちの安全のため………」
「そのことじゃないんですよ。」
青年はドープの言葉を遮る。
そしてまたドープを嘲笑い、言う。
「覚えていないんですか?
15年前。
西の村で発見された謎の子供。」
それにドープが一瞬迷うような顔をしてから、はっと目を見開く。
「……ぇ…あ……まさか………」
青年はまた声をあげて笑う。
「思い出しました?
妙な力を持った子供。
西の軍の支部で2年間実験を行ったでしょう?
その後彼は軍から逃亡しそのまま行方不明になった。」
ダグラスにはまったく検討がつかない話だった。
しかしドープには心当たりがあるようで、さっきよりも顔に浮かぶ恐怖が色濃くなったような気がする。
「あなたはあの実験の指揮を取っていましたね?
よーく覚えていますよ。
あなたの顔を。」
そこでドープの顔がもうこれ以上ないほど恐怖に歪む。
「お、お前………まさか…あの……」
そこでドープは見た。
青年の口の端が釣り上がり、笑う。
青年がドープに向けていた左手を、ドープの背後へと向けて振るう。
『ナグム。』
不思議な響きを持ったその言葉を、青年がつぶやく。
するとドープの背後で突然、すごい音をたてて火が立ち上る。
「やっと思い出してくれましたか?
私の名前はレイシア・リール。
15年前、あなたにお世話になったあの子供ですよ。」
レイシアはドープの前でしゃがみこみ、ドープの顔を覗き込む。
「この顔、覚えています?
あなたがあの時私を捕らえたままならば、今こんなことにはなっていなかったんです。」



