するとその言葉になぜかドープが顔を歪める。
ダグラスがそれを怪訝な顔で見る。
ルミナ族という言葉と、ドープの反応。
一体彼は何を知っているんだ?
青年はというと、そのドープにまた小さく笑う。
「はは、わかりやすいですね。
ではそのわがまま、聞いてあげましょう。」
そう言ったかと思うと、青年はナイフを突き付けている左手はそのままに、右手を前に差し出す。
そこでなぜか青年とダグラスの目が合う。
青年がやんわりと、目で微笑んだ気がした。
差し出した右手を軽く左に動かし、そして勢いよくそれを右に引く。
すると。
「ぅ、うわああああ!」
「なんなんだ?!!!」
「ぐあっ!!!」
突然部屋の中に突風が巻き起こり、壁に備えつけられた本棚からすべての本をさらっていく。
部屋をすごい勢いで飛び回るたくさんの本が、部屋にいた兵士たちの頭に当たり、どんどん昏倒する。
しかしなぜかダグラスには、一冊も当たらなかった。
しばらくして、部屋に立っているのはダグラスとドープ、そして青年だけになっていた。
「………お、お前は…………」
ドープが震える声で言う。
青年は掲げたままだった右手を軽く振るう。
すると部屋の中の風が消え、どさどさと本が落ちていく。
ダグラスも、今にも腰を抜かしそうだった。
いまの風は明らかに自然のものではなかった。
彼が、操ったのだ。
さらに青年は右手を開けっ放しになっていたドアへと向け、ひょいと指を振る。
するとそれに合わせてドアが勢いよく閉まる。
ダグラスと同じように驚愕の顔をして動かないドープから青年はナイフを外す。
ドープの背後から横に一歩進むと、無造作な仕種で左手を振る。
その適当な動きとは裏腹に、すごい勢いで飛んで行ったナイフが正確にドアの鍵穴のあたりに刺さり、ドアが開かないよう固定する。
唖然とその様子を見る2人をよそに、青年はゆっくりとマスクとフードをとる。



