「お楽しみのところ申し訳ありません。ドープ・ドルーシュ元帥。」
黒装束の青年が静かに言う。
「………なぜ殺さん?」
動かないままでドープが言う。
「殺しが目的ではありません。」
「何をしに来た?」
「お話がしたくて。」
「いつからここにいた?」
するとそれに青年は小さく笑って、
「そこにいる大佐が入ってきたころには。」
と言う。
それにドープが苦虫をかみつぶしたような顔になる。
「………こいつに雇われたのか…」
「いいえ、今日はプライベートですよ。」
ふざけるように言う青年に、ドープは鼻で笑う。
「はっ。
それにしても良くしゃべる暗殺者だな。」
青年もそれにまた笑い、
「ですから、暗殺者ではないんですよ。」
と言う。
しばらくその2人のやり取りを固唾を呑んで見守っていた兵士たちが、暗殺者の予想外の態度に緊張をゆるめ始める。
ある一人の兵士が小さく剣を握る手に力を入れると、
「ぅあああぁあ……っ」
その手にナイフが飛んで来る。
「馬鹿にしてるんですか?
私は今あなたたち全員の急所にナイフを投げ込むことができる。
大人しくしてください。」
さっきまでの穏やかな口調とは裏腹に、その場にいた兵士全員が射竦められる殺気を放ちながら青年が言う。
それにだれしもが震えた。
フードとマスクの間にのぞく彼の瞳は水色と黄緑のまざった色をしていて、その深い眼差しからは何も読み取れない。
「さて、では本題に入りますか。」
青年はさっきよりも鬼気のこもった声音で続ける。
後ろからドープの首にナイフを当てたまま、横目でドープの横顔を見る。
「あなた、ルミナ族のことはご存知のようですね。」
「ルミナ族?なんのこと……」
「大佐が入ってきたころから私はこの部屋にいたんですよ?」
「………。」
そのドープの反応に青年が笑う。
「はは、は、私はあのときのことを知っているんです。
この場でこの話、続けてよろしいですか?」



