「大佐?」
ドアの向こうからディルの声がする。
「大佐、どうかしましたか?
何やら物音がしましたが……」
しかし部屋の真ん中で尻餅をついたまま、立ち上がることができなかった。
心臓だけがうるさく脈打つ。
「大佐?ディガロ大佐?」
ディルが不安のこもった声でドアを叩く。
ディガロは数回深呼吸をして心を落ち着かせる。
いくらから落ち着いたところで、立ち上がりドアへと向かう。
さっきの刺客がやってくれたおかげでドアには数本のナイフが刺さり、簡単には開かなくなっていた。
ナイフを一本一本抜きながら、冷静を取り戻していく。
ドアをゆっくりと開けると、ディルが息をついて心底安心したような顔になる。
「大佐…………安心しました。
お返事がないので、何かあったのかと……。」
そのディルの顔にディガロも一気に気が抜ける。
「ディル、心配かけてすまない。
何かあったと言えばあったんだが…
暗殺者だよ。」
それにディルが目を見開く。
真剣な顔になって、状況を整理する。
「……暗殺者、ですか?
撃退されたということですね?
本部へは報告を………」
と言ったところでディガロが片手でそれを制する。
「いや、いい。
たいした暗殺者ではなかったから、追っても収穫はないだろう。」
それにディルが怪訝な顔をする。
「…よろしいんですか?
報告をする程度の手間なら私は……」
それにディガロはディルの頭をぽんと叩く。
「…心配ありがとう。
だが、必要ないよ。
お前のような優秀な部下を持って私は幸せだよ。」
ディルが顔を赤らめて俯くのを見て、ディガロは過去の自分を見ているようだった。
あのころも、私はこんなふうに見えていたのだろうか……。
振り向くと、窓の外はゆっくりと白みはじめていた。
「…………夜が、明けるな………」
そうつぶやいて、ディガロは今日の王城への訪問を取やめにすることを決めた。



