次の日。
予定どおり朝一番に、宿にティアーナからの手紙が届いた。
中には推薦状と、ティアーナがいつラズベル邸にいるかという予定が記されていて。
その予定まで時間があるということで、レイシアとシギは2人で王立図書館へ向かった。
「推薦状、または身分証をお持ちですかな。」
検問の小屋にいた老人が、見たことのない顔の2人の青年を怪しげに見つめた。
レイシアは微笑んで懐からティアーナからもらった推薦状を取り出し、老人にわたした。
老人は左目にかけられていた片眼鏡をかけ直しながら、それを見つめる。
「ほぉ……。ティアーナ嬢からのご紹介だとは…珍しいですな。」
「ええ、ティアーナ嬢に掛け合っていただいたんです。
もとは北の天文学研究所からの紹介で……。」
「北の…………?どちらの博士のもとで学んでおられるのかな?」
「モルガナ博士です。」
そのレイシアの言葉に老人は見開き、また片眼鏡を直してレイシアをまじまじと見つめた。
「なんと!その若さでモルガナ様の助手をされていらっしゃるのか!」
「ええ、一応。彼はまだ研究生ですが………」
シギを横目で見てそう言うレイシアに、シギは老人にぺこりと頭を下げる。
老人はシギを見てから上機嫌にレイシアを見つめて、たくわえた白い髭をゆらしながらうれしそうに笑う。
「それはそれは。
実は私も天文学を学んでおるものでな。モルガナ様の研究にはずいぶんと世話になっているのだ。
ほれ、これもモルガナ様の……」
こちらからは見えない小屋の手元から少し大きめの機具を取り出す老人に、レイシアはいつ用意したのか眼鏡をポケットから取り出し、機具を見つめて微笑む。
「ああ、遠距離特望眼ですね。
ずいぶんと古いものをお持ちで。」
「ああ、これは使い勝手が良い。」
「そうですね。私もついこの前までこれを使っていましたが、今はモルガニール望遠鏡を…」
「おぉ!モルガニールを買われたか!
いや、私も欲しいのだが……何せこの仕事から手が離せなくてな…王都にはまだ届けられておらんし、北に行く時間もない。」
「それは勿体ないです。
モルガニールなら今の時期ですとテラ座も美しく見えますし、つい最近のハルヤ流星群の観察にも向いていましたから。」
「ハルヤ流星群か……。
遠距離特望眼は流星群にはなかなか合わせられんからなあ。一応調整はしたが、上手く見えんかった。
観察記なんかはつけておらんのかね。」
「あ、ありますよ。
よろしければこれを………」
レイシアは手に持っていた本から紙束を取り出して老人にそれを渡し、それを見て喜ぶ老人の様子をシギは呆気にとられて見つめていた。



