「…………なるほど。
王立図書館の入館推薦書を手に入れるため、ですか?」
「お、ご明答です。」
同じく黒く美しい柵でできた門のの脇には、小さな小屋が建てられていて、検問を行っているらしい。
シギはしばらくその景観に見とれてから、振り向いて同じく柵をしげしげと見つめるレイシアに聞いた。
「推薦状はもらえそうなんですか?」
「はい。意外と簡単でした。
それ以上の収穫もありましたしね。」
レイシアは観察するように柵に沿ってゆっくり歩きはじめながら、シギを見ないまま続ける。
「彼女に再会を求められました。
もしこのまま上手くいけば、彼女のお気に入りくらいにはなれるかもしれません。」
「それがなんなんです?まさか師匠は彼女を………」
「あはは、ご冗談を。
貴族なんて真っ平ごめんですよ。
ただ、彼女と親しくなればなるほど、王城に入れる可能性が高くなります。
ラズベル公爵は王家の血筋ですからね。」
「王城に、ですか。
それなら下手に侵入するよりも楽ですね。」
「はい。さらに聞いたとこによると、明後日には王城で盛大なパーティーが開かれるとか。
そこに参加できれば、賑わいに上じてさらに簡単に王城をうろつけるでしょうからね。」
そこでレイシアはやっと足を止め、ついて来ていたシギのほうを振り向く。
「あなたがこの王立図書館で自分の目的を果たしている間、私はそっちの計画に集中します。
初めての別行動となりますが、がんばってくださいね。」
にっこり微笑んでそう言うレイシアに、シギはしっかりうなずいた。
王立図書館に入れることに、どこか心が弾む。
このドームのなかには世界中の知識が収められていて、たくさんの歴史が息づいているのだ。
もしかしたらルミナ族の記述があるかもしれない。
シギは親から記憶を預かっているから『選ばれしヒト』や魔術の知識は頭の中にあるが、それもどこか断片的だし、何より両親の記憶をそっくりそのまま植え付けただけで、自分の力になっているものは少なかった。
自分の目で確かめ学んだ知識がほしい。
「大丈夫です。上手くやりますよ。」
シギはそう答えてドームを見つめた。
そのときのレイシアが、笑顔を消した空虚な瞳で、シギを見つめていることには気づかなかった。



