不思議そうにそれを見つめる女性に、その花を差し出しレイシアは微笑んだ。
「まさかこんなところでラズベル公爵様のご令嬢とお会いできるとは……。
王都に来たかいもあったというものです。」
女性はしばらくレイシアを驚いたように見つめると、くすりと笑って花を受け取り、花の香りをかぐ。
「この花、好きですわ。
ありがとう。」
「いえ、お気に召されたのなら。」
レイシアはそれにもう一度微笑むと、またベンチに座ってすぐに本を開いて視線を落とした。
「…………学生さんですの?」
女性の言葉に、レイシアは顔を上げて微笑む。
「……まあ、そんなものです。」
「はっきりしない答えね。」
「失礼。いえ、学生は学生なんでしょうが…この王都のものではないものですから。」
「あら、そうですの。
なぜ王都へ?」
「私が学ばせていただいている師からの薦めなのですが……。」
困ったように微笑むレイシアに、女性は美しく顔をほんの少しひそめる。
「なんですの?おっしゃって。」
それにレイシアはまた微笑んで、持っていた本をパタンと閉じた。
「大変残念なんですが……どうやら手違いで、師からの推薦状が届いていなかったようなんです。」
「推薦状?」
「はい。あの、王立図書館へ入るための推薦状なのですが……」
「ああ、それでしたら………」
女性はそう言って執事を手招きすると、レイシアを見つめて笑う。
「この花のお礼ですわ。
推薦状くらいすぐに手配させます。」
「え?いえ、それは申し訳ありません。
どうせ王都に滞在できるのもあと数日ですから…」
「数日あるのでしょう?
今日明日にでも推薦状くらいは用意できますわ。」
「しかし………」
「良いのよ。」
女性は執事に一言二言伝え、執事は静かにうなずいて何かを書き留める。
レイシアがそれを見つめていると、女性は執事をまた下げさせてから、妖艶に微笑んだ。
「遅くても明日までには処理させておきますわ。
どこの宿にお届けしたらよろしくて?」
レイシアはしばらく黙り込んでから、また困ったように微笑んで本の間から取り出した紙をちぎって住所を書き、背後に来ていた執事にわたした。
「申し訳ないですが……助かります。」
「ふふ、お気になさらず。
その変わり、と言うか……条件がありますの。」
また花の香りをかぐように顔に近づけ、上目遣いにレイシアを見つめる女性にレイシアが首を傾げる。
女性はにっこりと、微笑んで言った。
「その数日間、私のお相手をしていただけません?」
「相手?」



