「ええ、知っていますよ。
彼は実に有名な賢者です。」
「はい。この国を作ったも同然だとか……」
「そうです。
ラムールという名前も、キニエラ族の古代語で『偉大なる父』という意味の『ラ・モウル』という言葉からきた彼の呼び名です。」
「そうなんですか!
では本名は他にあると?」
「はい。本名は確か……
ルル………そう、ルル・フィローだったはずです。」
「よく知っているんですね。」
「あなたのご両親の教育ですよ。」
レイシアはまたにっこり微笑むと、突然立ち上がって自分の荷物に近寄ると、その中から一冊の本を取り出して何か調べはじめた。
あるページで手を止めて何かを覚えるような顔になると、納得したようにうなずいてシギを見る。
「なんとかなりそうです。
王立図書館に入ってみましょうか。
私も調べたいことがありますから、いっしょに行きましょう。」
「え?大丈夫なんですか?」
「もちろん。あとは時の運です。
ただし、条件が。」
「条件?」
「はい。」
レイシアはベッドに腰掛けたままのシギに近寄ると、シギが膝に置いていた見取り図を手にとってシギの顔の前に広げた。
「まず、たとえ王立図書館が興味深いとしても、最終目標は王城であることを忘れないこと。」
「はい。」
「さらに、ルミナ族のことについて調べるときは、私は協力しません。
王立図書館に入るのは別ですが、他は自分の力でやること。
いいですね?」
「……はい。」
それに不安になるシギをよそに、レイシアはにっこりと微笑んでうなずいた。
「よろしい。では、行きますよ。」
「え、今ですか?」
「もちろん、今です。
王立図書館に入るのは可能ですが簡単ではないので、今日のうちから仕掛けますよ。
うまくいけば今日、明日には入れるでしょう。」
そう言うとレイシアは来ていたシャツを整え、髪を結び直し、荷物からいくつかの本を持って手早くまとめたりして。
シギがそれを呆然と見つめていると、レイシアはまとめた本を脇に抱えてシギのほうに振り向く。
「ほら、早く準備してください。
あ、それから王立図書館では貴族っぽく振る舞っていてくださいね。」
どこか楽しそうに微笑むレイシアに、シギは呆れてため息をついたのだった。



